この調査は、広島大学の卒業生・修了生の、論文執筆過程での生成AIの利用状況を把握し、本学のこれからの教育改善に資することを目的としておこなったものです。
調査対象 - 広島大学を2026年3月卒業・修了した学生 2984名 (学士課程1959名、博士課程前期 1025名)
調査方法 - インターネット調査。電子メールで調査対象者に回答を直接依頼。
調査期間 - 2026年3月13日〜31日
回答数 - 233件 (回答率 7.8%)
調査実施部局 - 情報メディア教育研究センター
ご協力ありがとうございました。
- 浸透度: 回答者の91%が、日常的に生成AIを利用し、そのうち半分は私的にも学業目的にも活用している。卒論・修論活用は回答者の80%で、前年の46%、前々年25%から2年連続でほぼ倍増。(質問4,5,9)
- 教員からの指導: 何らかの指示・助言あり 49 %(+19 pt)、禁止は横ばい(質問6)
- ツール: ChatGPTの利用率は下降してきてはいるが、67 %が ChatGPTを主に利用していると回答。うち30%が有料版を使用。Geminiの利用者が20%。(質問12)
- 用途: 校正が3年連続で最多。一方、壁打ち・文献理解・専門知識の把握も急伸し、AIが「思考の足場かけ」となる使われ方もぞうかしてきている。(質問14-18)
- 効果の実感: 効率向上 80 %。質向上は56 %(質問17)
- 懸念点: 生成AIの利用に不安ありとの回答は66%で、少しずつ増えてている(質問19,20)
質問1: 所属を教えてください。研究科の場合はプログラム名もお書きください。
回答表示省略
質問2: 専門分野を教えてください。
回答表示省略
質問3: 専門分野を以下のように分類するとどこに当たると思いますか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 29 12.4% 人文系 30 12.9% 社会科学系 37 15.9% 教育系 26 11.2% 医療系 56 24.0% 工学系 43 18.5% 理学系 10 4.3% その他 2 0.9% 未回答
質問4: ChatGPTなどの生成AIがあることを知っていますか。また使ったことがありますか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 226 97.0% 知っていて、使ったことがある 7 3.0% 知っているが、使ったことはない 0 0.0% 知らない 0 0.0% 未回答
質問5: 前の問で「知っていて、使ったことがある」と回答された方にお尋ねします。日常的に使っていますか?(複数選択可能)
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 176 75.5% はい、大学での学習や研究に利用 149 63.9% はい、学習や研究以外の私生活で利用 14 6.0% いいえ
質問6: 卒論・修論の執筆に際して、生成AIの利用について指導教員から指導はありましたか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 9 3.9% 利用を禁止されていた 53 22.7% 利用を認められているが、使い方については言及はなかった 51 21.9% 利用を認められており、具体的な使い方を示された 98 42.1% 生成AIについて特に話はなかった 18 7.7% 憶えていない 4 1.7% その他 0 0.0% 未回答
質問7: 指導教員は生成AIを使っている人でしたか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 55 23.6% 使っていた 40 17.2% 多分使っていた 36 15.5% 多分使っていない 17 7.3% 使っていない 85 36.5% わからない 0 0.0% 未回答
質問8: 今回卒論・修論を執筆しましたか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 131 56.2% 卒論を(日本語で)執筆した 76 32.6% 修論を(日本語で)執筆した 6 2.6% 卒論を(英語で)執筆した 7 3.0% 修論を(英語で)執筆した 13 5.6% 執筆していない 0 0.0% 未回答
質問8(thesis)<4
質問9: 卒論・修論執筆にあたり、生成AIをどの程度利用しましたか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 71 32.3% ほぼ毎日 67 30.5% 週に数回 38 17.3% 月に数回 44 20.0% 利用していない 0 0.0% 未回答
質問9(freq)==3
質問10: 生成AIを利用しなかった理由はなんですか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 12 27.3% 普段から利用していないから 4 9.1% 使い方がよく分からないから 13 29.5% 使っても良いのかどうかよく分からないから 15 34.1% 研究不正にあたると考えたから 22 50.0% 論文の信頼性が下がると考えたから 5 11.4% 教員に利用を禁止されていたから 11 25.0% その他
質問9(freq)<3
質問11: 利用した生成AI(チャットボット)はどれですか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 123 69.9% ChatGPT:無料版 48 27.3% ChatGPT:有料版 17 9.7% Copilot:大学のアカウント 15 8.5% Copilot:無料版 3 1.7% Copilot:有料版 19 10.8% Gemini:大学のアカウント 42 23.9% Gemini:無料版 32 18.2% Gemini:有料版 7 4.0% Claude:無料版 5 2.8% Claude:有料版 8 4.5% その他
質問12: 主として利用した生成AI(チャットボット)はどれですか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 83 47.2% ChatGPT:無料版 35 19.9% ChatGPT:有料版 6 3.4% Copilot:大学のアカウント 4 2.3% Copilot:無料版 0 0.0% Copilot:有料版 7 4.0% Gemini:大学のアカウント 15 8.5% Gemini:無料版 20 11.4% Gemini:有料版 2 1.1% Claude:無料版 2 1.1% Claude:有料版 2 1.1% その他 0 0.0% 未回答
質問13: Q11のチャットボット以外で、研究に利用したAI支援ツールがあれば記入してください。(例:NotebookLM, Consensus, Notion AIなど)
(自由記述 28 件の Claudeによる要約)>
NotebookLM(16件)が突出していました。これに学術検索・論文要約系の Consensus(5件)、Elicit、SciSpace、Scigen が続きます。 コーディング支援系では GitHub Copilot 系(4件)、Claude Code、Codex、OpenAI API、Anti Gravity が挙がっています。 汎用検索・対話系として Perplexity(2件)、DeepSeek、文章校正系として Grammarly、文書作成系として Notion AI が挙げられていました。
質問14: どのような用途に利用しましたか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 89 50.6% アイデア出し、壁打ちなど構想の高度化 67 38.1% 論文・文章の骨組み作り 33 18.8% 文章生成 117 66.5% 文章校正 95 54.0% 先行研究論文の要約など理解の支援 48 27.3% 関連資料・サイトの要約など理解の支援 76 43.2% 専門的知識の理解の支援 48 27.3% GoogleなどのWeb検索の代替 64 36.4% 英語から日本語への翻訳 32 18.2% 日本語から英語への翻訳 14 8.0% 図表の生成 43 24.4% プログラムの生成 25 14.2% データ分析の支援 16 9.1% プレゼン資料の生成 10 5.7% その他
質問15: 役に立った使い方を具体的に教えてください
(Claude Opus 4.8 による要約)
- 文章の校正・推敲
- 誤字・脱字の修正、文法チェック(「ほぼ完璧」との声が複数)
- 論文向けの文体・学術的表現への変換
- 稚拙な語・冗長表現の言い換え、簡潔な表現への変換
- 論理の飛躍・段落間のつながり・整合性を第三者目線で確認
- 指定文字数内への圧縮、読みやすさ・客観性のチェック
- LaTeX/TeXのエラー処理、数式まわりの誤字チェック
- 翻訳
- 英文和訳、和文英訳(文法・スペル・学術表現・投稿用など複数案を出力し組み合わせ)
- 多言語の和訳(韓国語・フランス語・オランダ語・インドネシア語・サンスクリットなど)
- 既存の翻訳アプリより高い完成度・自然な訳文
- 文献の検索・要約
- 先行研究・引用候補の検索(実験条件や曖昧なワードでも絞り込み可能)
- 語彙不足で難しい英語論文の検索代行、芋づる式の関連文献収集
- 論文・資料の要約、内容理解の深化
- 自説の補強/反論となる論文の提示、新規性の確認
- 参考文献の書式統一、bib形式での出力
- プログラミング・データ分析
- Python・R・VBA・TeXなどのコード生成・修正
- エラー・ログの解析と解決策の提示
- データの整理・抽出、グラフ・図表の作成(コードが書けなくても作成可能)
- 統計手法・分析方針の相談、データ解釈や考察の妥当性確認
- 対話型コーディングでロジック設計に集中(仕様を渡して生成→検証の反復)
- 専門知識の理解・補完
- 専門用語・未知分野の概要把握、平易な説明、別視点からの理解
- 統計ソフトやWord/Excelの使い方の案内
- Web検索の代替
- 構想・思考の整理
- 論文の骨組み・章立て・構成案の検討
- 壁打ち・ブレストによる思考整理、論点の可視化
- まとまらない考えの言語化
- 実験の構想・次の実験の方向づけ、図表からの結果・考察の概案出し
(回答 112 件、未回答 64 件)
質問16: 利用していて「これはまずいので、気をつけないといけないな」と思ったところがあれば具体的に教えてください
(Claude Opus 4.8 による要約)
- ハルシネーション・誤情報(最多)
- 嘘・根拠のない内容を、事実のようにもっともらしく提示してくる
- 「出典を明記して」と指示しても架空の文献を挙げる、削除済みサイトを提示
- 数学的証明・計算・化学式などで誤りや矛盾を含む
- 専門的・医学的な内容ほど誤答が増える傾向
- 主張の出典人物を取り違えるなど、専門情報の信頼性が低い
- 情報漏洩・機密保持
- 研究内容・コードをそのまま入力すると外部に漏れる懸念
- 生データ・未発表の図表は入力しない、入れる際はクリティカルな情報を削る
- 個人名・プロフィールなど個人情報の入力を避ける、データは匿名化
- 学習させない設定にしても本当に守られているか確認しようがない不安
- 過度な依存・思考停止
- 文章を丸ごと生成させると自分の文章・解釈・表現でなくなる
- AIのアイデアや言い回しがいつの間にか自分の思考になってしまう
- そのままコピペすると自分で考えずに文章ができてしまう
- 使いすぎると思考停止に陥る危機感、頼り切りにならない注意
- 出力内容の検証・裏どりの必要
- 出力を鵜呑みにせず、信頼できる文献や講義の知識と照合する
- 根拠となる一次文献・URLを必ず提示させ、自分の目で確認する
- 文献調査はGoogle Scholar等で裏どりする
- 自分で検証できない(理解の及ばない)内容は採用しない
- 意図とのずれ・出力の質
- 要約・校正で、与えたファイルと異なる文脈・内容を勝手に生成する
- 翻訳が意訳寄りで、原文どおりに訳されていないことがある
- プログラムが一見正しそうでも指示と微妙に違う実装になっている
- 勝手に考察・結論づけをする、重複表現や不自然な文を出す
- 曖昧なプロンプトだと誤答するため、的確で具体的な指示が必要
- 研究倫理・著作権
- 生成された文章・画像が他者の著作物である可能性、盗作のリスク
- 他人の論文PDFを読ませることが学習への加担にならないかという不安
- 外れ値を都合よく除外するよう助言されるなど、データ改ざんの誘発
- 「浮き彫りにする」等のAI風表現が散見され、研究科全体のリテラシー低下を懸念
(回答 113 件、未回答 63 件)
質問17: 生成AIはどのように役に立ったと思いますか
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 98 55.7% 論文の質・完成度が上がった 140 79.5% 論文の作成が効率的になった 7 4.0% その他
質問18: 自分が生成AIを使わずに卒論・修論を執筆したとすると、どのような違いがありそうでしょうか?あてはまるものを全て選んでください
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 75 42.6% てにをはなど文法上の誤りや漢字の誤変換がある 74 42.0% 論理展開に不備がある 12 6.8% グラフや図が少ない 45 25.6% 参考文献が少ない 40 22.7% 研究に必要なプログラムが作れなかった 20 11.4% その他
質問19: 生成AIの利用に不安はありましたか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 114 64.8% あった 60 34.1% なかった 2 1.1% 未回答
質問20: 不安があったという方にお聞きします。どのような種類の不安でしょうか?あてはまるものをすべて選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 63 35.8% 研究不正にならないか 74 42.0% 間違った内容を書くことにならないか 31 17.6% 自分が知らない内容を書くことにならないか 37 21.0% 自分で確認できない内容を書くことにならないか 60 34.1% 生成AIに送った情報が流出しないか 0 0.0% その他
質問21-質問47:(AI不安尺度測定の質問)
回答表示省略
(昨年度のメッセージはこちらからご覧いただけます。あわせてご参照ください。)
データ流出のリスクについて
今年度のアンケートでも、研究内容やコードをそのまま入力すること、生データ・未発表の図表・個人情報を入力することへの懸念が数多く挙げられました。実際に、生データを含むファイルは入力しない、未発表データはクリティカルな情報を削ってから渡す、データを匿名化する、といった工夫を自発的に行っている回答が目立ちました。入力する前に「外部に出て困らない内容か」を一度立ち止まって確認することをおすすめします。
2026年3月16日に、大学が提供する生成AIへのデータ入力の扱いなどを含む「広島大学における生成AIの利用等に関するガイドライン」が制定されました。現在広大CSIRTのホームページから参照できます。情報セキュリティの観点から整理されたものですので、生成AIを研究や学習に使う前に一度目を通しておいてください。
「自分で考える力」への影響について
生成AIに文章の生成や考察まで任せると、出力された表現や論理がいつの間にか自分の考えのようになってしまう、という声が今年度のアンケートで複数挙げられました。「段落全体の改善案をそのままコピペすると自分で考えずに文章ができてしまう」「使いすぎると思考停止に陥る」といった学生の実感です。
2025年には、生成AIへの過度な依存が思考力や記憶の定着に影響するのではないか(いわゆる「認知的負債」)という議論も話題になりました。現時点でこれが明確に立証されているわけではありませんが、研究は本来、自分で考え、理解し、判断するものであり、大学はそれを学ぶ場でもあります。生成AIは下書きや壁打ち、検索の補助として強力なツールですが、最終的な解釈・判断・表現、そして「考え」は自分に残しておくことを意識すべきではないでしょうか。
生成AIを適切に使いこなすこと自体が、今後ますます重要になっていくのも確かです。リスクを理解したうえで、上手に付き合っていきましょう。判断に迷う場面では、まず指導教員に相談することをおすすめします。