この調査は、広島大学の卒業生・修了生の、論文執筆過程での生成AIの利用状況を把握し、本学のこれからの教育改善に資することを目的としておこなったものです。
調査対象 - 広島大学を2025年3月卒業・修了した学生 2899名 (学士課程1969名、博士課程前期 930名)
調査方法 - インターネット調査。電子メールで調査対象者に回答を直接依頼。
調査期間 - 2025年3月18日〜31日
回答数 - 282件 (回答率 9.7%)
調査実施部局 - 情報メディア教育研究センター
ご協力ありがとうございました。
- 浸透度: 利用経験 80 %、日常利用 65 %、卒論・修論活用 46 %(23 年度の 66 %, 49 %, 25 %から大幅増)。修論・卒論で「ほぼ毎日」利用は 3 %→12 %(質問4,5,8)
- 教員からの指導: 何らかの指示・助言あり 30 %(+10 pt)、禁止は横ばい(質問6)
- ツール: 卒論・修論利用者の 88 %が ChatGPT、うち有料版は学部 14 %、院 25 %(質問11)
- 用途: 校正が最多(約半数)。前工程(先行研究調査など)は増加、後工程(骨組み作成・英訳など)は微減(質問12-14)
- 効果の実感: 効率向上 80 %。質向上は学部 38 %、院 46 %(質問15)
- 懸念点: 利用者の約半数が不安を抱えたまま使用(質問17)
質問1: 所属を教えてください。研究科の場合はプログラム名もお書きください。
回答表示省略
質問2: 専門分野を教えてください。
回答表示省略
(回答 260 件、未回答 22 件)
質問3: 専門分野を以下のように分類するとどこに当たると思いますか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 35 12.4% 人文系 27 9.6% 社会科学系 38 13.5% 教育系 34 12.1% 医療系 73 25.9% 工学系 66 23.4% 理学系 7 2.5% その他 2 0.7% 未回答
質問4: ChatGPTなどの生成AIがあることを知っていますか。また使ったことがありますか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 221 78.4% 知っていて、使ったことがある 61 21.6% 知っているが、使ったことはない 0 0.0% 知らない 0 0.0% 未回答
質問5: 前の問で「知っていて、使ったことがある」と回答された方にお尋ねします。日常的に使っていますか?(複数選択可能)
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 143 50.7% はい、大学での学習や研究に利用 96 34.0% はい、学習や研究以外の私生活で利用 42 14.9% いいえ
質問6: 卒論・修論の執筆に際して、生成AIの利用について教員から指導はありましたか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 11 3.9% 利用を禁止されていた 41 14.5% 利用を認められているが、使い方については言及はなかった 35 12.4% 利用を認められており、具体的な使い方を示された 192 68.1% 生成AIについて特に話はなかった 3 1.1% その他 0 0.0% 未回答
質問7: 今回卒論・修論を執筆しましたか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 172 61.0% 卒論を(日本語で)執筆した 87 30.9% 修論を(日本語で)執筆した 8 2.8% 卒論を(英語で)執筆した 9 3.2% 修論を(英語で)執筆した 6 2.1% 執筆していない 0 0.0% 未回答
質問7で「卒論・修論を執筆した」と回答した方対象
質問8: 卒論・修論執筆にあたり、生成AIをどの程度利用しましたか?
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 32 11.6% ほぼ毎日 48 17.4% 週に数回 48 17.4% 月に数回 148 53.6% 利用していない 0 0.0% 未回答
質問8で「卒論・修論執筆に生成AIを利用しなかった」と回答した方対象
質問9: 生成AIを利用しなかった理由はなんですか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 78 52.7% 普段から利用していないから 35 23.6% 使い方がよく分からないから 45 30.4% 使っても良いのかどうかよく分からないから 47 31.8% 研究不正にあたると考えたから 43 29.1% 論文の信頼性が下がると考えたから 2 1.4% 教員に利用を禁止されていたから 16 10.8% その他
質問8で「卒論・修論執筆に生成AIを利用した」と回答した方対象
質問10: 利用した生成AIはどれですか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 105 82.0% ChatGPT:無料版 24 18.8% ChatGPT:有料版 16 12.5% Copilot:無料版 1 0.8% Copilot:有料版 13 10.2% Gemini:無料版 0 0.0% Gemini:有料版 2 1.6% Claude:無料版 1 0.8% Claude:有料版 6 4.7% その他
質問11: 主として利用した生成AIはどれですか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 92 71.9% ChatGPT:無料版 21 16.4% ChatGPT:有料版 9 7.0% Copilot:無料版 0 0.0% Copilot:有料版 3 2.3% Gemini:無料版 0 0.0% Gemini:有料版 1 0.8% Claude:無料版 0 0.0% Claude:有料版 1 0.8% その他 1 0.8% 未回答
質問12: どのような用途に利用しましたか?あてはまるものを全て選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 40 31.2% アイデア出し、壁打ちなど構想の高度化 20 15.6% 論文・文章の骨組み作り 12 9.4% 文章生成 69 53.9% 文章校正 47 36.7% 先行研究論文の要約など理解の支援 28 21.9% 関連資料・サイトの要約など理解の支援 43 33.6% 専門的知識の理解の支援 34 26.6% GoogleなどのWeb検索の代替 50 39.1% 英語から日本語への翻訳 23 18.0% 日本語から英語への翻訳 6 4.7% 図表の生成 40 31.2% プログラムの生成 18 14.1% データ分析の支援 5 3.9% プレゼン資料の生成 5 3.9% その他
質問13: 役に立った使い方を具体的に教えてください
(ChatGPTによる要約)
- 文章作成・校正・翻訳
- 誤字・脱字の修正、文体や表現の改善
- 日本語や英語の文章校正、論文表現への調整
- 書きたい内容を箇条書きで提示し、文章化
- 表現の言い換え、語彙の提案
- 読みやすさや客観性のチェック
- 「冗長な部分の削除」「簡潔な表現への変換」
- 文構造の骨組み作成、イントロや導入の叩き台作成
- 英文和訳、和文英訳、アラビア語翻訳など多言語対応
- LaTeXのtableや数式コマンドなど、文書フォーマット支援
- 検索・情報収集・文献管理
- 先行研究の検索、代表的論文の提示
- 論文の要約・翻訳・段落ごとの整理
- 通常検索では難しい複雑条件の検索を代行
- GPTsを使った論文検索・要約
- 専門用語や未知の分野について概要を掴む
- 所望の性質を持つ試薬の検索
- 検索キーワードが思い浮かばない時の助言
- GPTsのConsensusなどの機能を活用した調査
- プログラミング・統計・解析
- Python、R、VBA、TeX、LaTeXなどのコード作成・修正・添削
- 箱ひげ図やグラフ作成、解析結果の図表化支援
- 統計処理の手順・ソフトの使い方の案内
- エラー原因の特定と解決策の提案
- プログラム構文・関数の提示、複数手法の提案
- データ分析や機械学習のコード例作成
- Excel関数作成、Word/Excelの操作支援
- アイデア出し・構成支援・知識補完
- 論文の構成案やタイトル案の提案
- 研究導入や緒論部分のアイデア発想
- 思考の具体化(言語化、ビジュアル化)
- 抽象的な妄想に筋道を与える
- 課題やテーマに関連する参考論文・トピックの提示
- 授業で学んだが忘れてしまった知識の補完
(回答 85 件、未回答 43 件)
質問14: 利用していて「これはまずいので、気をつけないといけないな」と思ったところがあれば具体的に教えてください
(ChatGPTによる要約)
- 情報の信頼性・正確性の問題
- 存在しない論文や架空の文献を提示することがある
- 数学や専門知識の説明に誤りが含まれる場合がある
- 情報源や出典が不明確な場合があり、裏取りが必要
- ブログなど信頼性の低い情報を正しいものとして出力することがある
- 文章・翻訳・プログラムの品質の問題
- 翻訳の精度が不十分で、意味がずれることがある
- 文章校正で論理や専門性が損なわれる場合がある
- プログラムや数式に動作しない、誤ったコードが含まれることがある
- 自動生成された文章に不要な加筆や不自然な文が含まれることがある
- 利用姿勢・依存への懸念
- AI任せにすると思考力や論理構築力が低下する恐れがある
- コピペ使用やそのままの引用は剽窃のリスクがある
- 回答をうのみにせず、必ず自分で確認・判断する必要がある
- プライバシー・データ流出のリスク
- 研究内容や個人情報など機密情報の入力は流出リスクがある
- オンラインAIツールでの情報入力が学習対象になる不安がある
(回答 80 件、未回答 48 件)
質問15: 生成AIはどのように役に立ったと思いますか
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 52 40.6% 論文の質・完成度が上がった 102 79.7% 論文の作成が効率的になった 4 3.1% その他
質問16: PerplexityやNotebookLMなどのAIツールで、利用したものがあれば記入してください。
Perplexity, NotebookLM, GitHub Copilot などが上がっていました。(回答 15 件、未回答 113 件)
質問17: 生成AIの利用に不安はありましたか
回答数 割合 選択肢 (単一回答) 68 53.1% あった 59 46.1% なかった 1 0.8% 未回答
質問18: 不安があったという方にお聞きします。どのような種類の不安でしょうか?あてはまるものをすべて選んでください。
回答数 割合 選択肢 (複数回答可) 35 27.3% 研究不正にならないか 60 46.9% 間違った内容を書くことにならないか 22 17.2% 自分が知らない内容を書くことにならないか 29 22.7% 自分で確認できない内容を書くことにならないか 3 2.3% その他
質問19-質問40:(AI不安尺度測定の質問)
回答表示省略
データ流出のリスクについて
テキスト生成AIのサービスでは、チャットボットでの利用者と生成AIのやりとりを、学習利用(モデルの改善のために利用)することがあります。そのため、自分の打ち込んだ文章や内容が、別のひとがサービスを利用するときに出てきてしまうのではという不安があるのだと思います。テキスト生成AIは仕組み上、学習した文章を複製したり切り貼りして出力する可能性は極めて低いのですが、絶対にないと断言することもできなさそうです。必要に応じて、以下の手順で学習利用をオフにできます。また、広島大学のアカウントで利用できるCopilotやGeminiでは最初からオフになっています。
ChatGPTでは「一時チャット」の機能を使うことで、履歴を残さない利用が可能です。この場合でも、Geminiでアクティビティをオフにした場合でも、一定期間チャットのデータはサーバに保存され、何らかのトラブル対応で使用される可能性があることに注意してください。
研究不正になるのではないか、という懸念について
2025年5月時点で、広島大学の研究倫理指針では生成AIの研究利用について言及されていません。広島大学がしめす指針である「本学の教育活動における生成AI(ChatGPT等)の利用方針について」にあるように、指導教員の指導を仰ぐのが出発点になります。
卒論・修論以外では、研究の成果公開は研究会発表やジャーナルなどへの研究論文提出となりますが、学会や出版社ごとに異なる指針が出ているのが現状です。生成AIを著者として加えることは不可とされていることがほとんどで、文章や図表作成の際の利用可否については学会・出版社によって異なっています。利用を可とする場合でも、謝辞や注釈などでツール名や利用方法などについて明記することを求めていることが多いようです。
何も示されていない場合は個人の判断となりますが、最小限の注意事項として以下が挙げられると思います: